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福岡地方裁判所 昭和54年(ワ)2428号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一本件事故現場は、車道の幅員約8.2メートル、両側に幅約1.5メートルの路側帯があり、現場付近で福岡市東区名島方面から同区馬出方面に通ずる福岡直方線と、車道の幅員約6.6メートル、片側に幅約一メートルの歩道があり、現場付近で同区筥松町方面から北西の国道三号線方面に通ずる道路が、略略直角に交差する通称宮前交差点であること、事故交差点は、同区箱崎一丁目二四番一〇号先の市街地であり、交差道路のいずれもアスファルト舗装で、最高速度時速四〇キロメートルに制限され、また、両道路の両側に店舗、銀行等があつて、相互の見とおしが悪く、二四時間信号機による交通整理が行われていること、本件事故当時、被告松尾秀宏は、普通貨物自動車(福岡四四て七〇六)に水産加工品約一、二〇〇キログラムを積載して、中央卸売市場に向うべく、事故発生の午前四時三〇分頃筥松町方面から国道三号線方面に向け、事故交差点にさしかかつたこと、そして、同交差点入口の約52.2メートル手前で、対面信号が黄色であることを認め、安全に停止できる状況にありながら、右信号を無視して進行を続け、対面信号が赤色に変つたのち、交差点の直前で、右方から進入してくる被告金山秀行運転車を発見したが、有効な措置をとり得ないまま、自車の前部を被告金山秀行運転車の左側面に激突させたこと、他方、原告恵美子は、福岡県宗像郡赤間町の知人訴外吉田京子方に遊びに行つた帰途、事故前夜の午後一一時頃、同女を訪ねて来た訴外梅津和敏と被告金山秀行にすすめられ、同女及び梅津和敏と共に、同被告運転の普通乗用自動車(福岡三三さ六二二)に同乗したこと、そして、福岡市内の同被告方を経て、再び、同被告らの知人という同市東区多々良の訴外花岡和幸方まで引き返し、同夜午前零時ないし午前一時頃から午前四時頃までの間右同人方にいたところ、その際、被告金山秀行は、ビール、ウイスキーの水割、ストレート等をコップ数杯、原告恵美子もコップ何杯か飲んだこと、右飲酒後、被告金山秀行は、訴外花岡和幸が同吉田京子を赤間町の自宅に送り届けるのに同道したのち、午前四時過ぎ頃、前記普通乗用自動車の後部座席右側に梅津和敏、左側に原告恵美子を同乗させ、自ら同自動車を運転して、花岡和幸方を出発し福岡市東区千代町方面に向つたこと、そして、深夜、交通量の少ない道路を時速六〇キロメートル、或いは七〇キロメートルの高速で疾走し、事故発生の午前四時三〇分頃本件交差点にさしかかり、同交差点を名島方面から馬出方面に直進しようとしたこと、しかし、同交差点入口の手前約一八メートルの地点で対面信号が青色に変るのを認め、時速約六〇キロメートルの速度で進行を続けたため、右交差点入口の直前で、左方道路から進入する被告松尾秀宏運転車のライトを認め危険を感じたが、既に何らの措置もとり得ず、その直後、交差点の中央を過ぎたあたりで、自車の左側面に被告松尾秀宏運転車が衝突したこと、以上のように認めることができ、<証拠>中、本件交差点での同被告運転車の速度が時速二、三〇キロメートルであつたとの部分は措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。

右認定した事実によれば、本件事故は、被告松尾秀宏の信号無視を決定的な原因として発生したものというべきであるが、被告金山秀行についても、酒気を帯びて事故自動車を運転していた点、及び見とおしの悪い街中の交差点に、制限速度を超える時速約六〇キロメートルの高速で進入した点等で無過失とはいえず、被告金山秀行に右酒気帯び運転、速度違反の注意義務違反がなく、交差点での安全運転義務が尽されておれば、仮に事故を避け得なかつたにせよ、その態様、程度等にかなりの差異が生じたものと考えることができ、結局、原告らとの関係では、被告金山源吾の免責の抗弁事実は右の点で採用できず、被告金山秀行も、民法七〇九条、七一九条により、被告松尾秀宏との共同不法行為者としての責任を免れないと解するのが相当である。

二住居の改造費

原告らは、原告恵美子が起立、歩行不能になり、車椅子で場所の移動をせねばならなくなつたため、本件の自賠責保険金等を資金にして、昭和五五年二、三月頃肩書住所地に、身障用に改造するのに適した木造瓦葺二階建居宅一棟を購入したこと、そして、同年五、六月頃までに、訴外稲永工務店に依頼して、その階下部分を、原告恵美子のために、車椅子で動き易いよう部屋を広くとり、段差をなくし、浴室、洗面所を改め、押入れや箪笥を特別に設備し、屋外のテラスをスロープ状にする等改造したこと、右改造工事の見積費用は八六三万六、五〇〇円(甲二一号証)であり、原告らは現在そのうち五六〇万円の支払を了していること、しかし、右改造費用は、原告恵美子の日常生活を補うために支出されたものとはいえ、現実には、原告ら三名の共益部分があることも否定できないと考えられ、その他の事情も併せ考え、右改造費用のうち五〇〇万円を本件事故と相当因果関係のある損害として認めるのが妥当であること、

以上のように認めることができ、右認定に反する証拠は存しない。

三ところで、原告恵美子が本件事故のため多大の肉体的、精神的苦痛を被つたことは明らかであり、被告らにその慰藉の責任があるのはいうまでもないほか、同原告の負傷の程度、後遺症の内容等を考慮すると、その母である原告節子も、原告恵美子の生命を害されたに比肩すべき精神的苦痛を被つたものとして、民法七〇九条、七一一条に準拠し、固有の慰藉料を請求できるものと解せられるが、原告恵美子の妹である原告みさをについては、父母、配偶者及び子に準ずるか、或いはその他の特別な事情も認められないので、同原告の慰藉料支払を求める本訴請求は、この点で失当として、排斥せざるを得ない。 (田中貞和)

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